バーに重なる昔の姿

その日、私は、バーに行くことにしました。バーに行くといっても、昼間に空いているバーというのはありませんでしたので、夕方早い時間から空いているバーを探して、行きました。当然早い時間なので、ガラガラ。お客さんは全くいません。

そこで、お酒を注文したいところですが、服薬の関係であまり飲めませんので、私はバーにいってソフトドリンクとフードを注文するという、非効率的な事をしました(笑

久しぶりのバーで、店員さんにオーダーをするだけでかなり緊張してしまいましたが、コーラを手にしてポテトを食べているうちに、ふと、まだ元気なころにバーに行っていた記憶が戻ってきました。

それはまだ自分がスーツを着て、仕事帰りにバーに寄って帰れるような生活ができている頃の、はるか昔の記憶でした。

コーラを掲げてカウンターに腰かけている自分に、その頃の記憶が重なりました。その時に、自分がとても不自然にその空間に溶け込めずにいることに気づきながらも、その頃の落ち着きを想い出すことができたのです。

お酒の代わりにコーラを片手に店員さんと会話をすることができました。お花見をしたかというような話でした。お花見なんて全く自分の現状とはかけ離れた話でした。

私は自分に普通の人としてお花見の話を振ってもらえたことが嬉しく、また、病気でないように振舞えたことが嬉しく、それが一つの自信につながったのです。

自分はまだ完全に人間性を失っていない。