予備校に行く決心

たまに外に出てはカフェで参考書を開き、又、外に出れない日は家で少し勉強するといった具合に、少し勉強が進むようになりました。

もちろん、体調が悪くて何もできない日と半々程度の割合だと思いますが、勉強が進む日というのもあり、次第に、勉強するということが辛いチョイスとして常態的に日常生活の中で存在感を発揮し始めていました。

勉強が進んで気付いたことがありました。うつ病とはあまり関係のない事ですが、建築法規の法改正というのがここ数年間の間にあり、建築士の資格勉強の過去問が現状の法規に対応していないということに気づいたのです。

これは非常にまずい事で、過去問が対応していないということになると、どうやって資格勉強をしていいかの指針を失ってしまうということになります。

そこで、私は予備校に問い合わせ、なんとか教材を手に入れられないかと打診し、最終的には、有料の教材を購入し、かつ、試験直前には予備校に通うというコースを申し込むというかなりその頃の体調ではほぼ不可能と思われる選択をしてしまいました。

これによって、私は6月末までに、何回かの模試で教材のみの独学で良い点を取り、かつ予備校に通える程度まで体調を回復させなければならないという、ハードルを自らに課すことになってしまいました。

当然、その頃、全くそれができるという見込みはなかったのですが、間違った過去問を説くよりかはましな選択であるように感じたのです。ここから自分の、生活に鞭が入ります。

レンタルオフィス

できない日

外出ができるようになってきても、もちろん何もできない空白の日はありました。昼頃に起きて、だるくて何もできず、携帯をいじりながらゴロゴロし、インターネットでネガティブな検索を繰り返し、いたずらに自己否定を繰り返していました。

夜まで結局頭を抱えて、勉強も全くせずに、今日は何もしていないと嘆き、だるさとうつの辛さに打ちひしがれ、何もしなかった自分を呪い、夜も悶々と考え続ける日が何日もありました。

そんな時に唯一の救いはウォーキング/ランニングでした。少しでも外に出て運動すると、少しその間は心配事が楽になりました。また、少なくとも運動をしたという実績が残るので何もしていない時よりも気は楽になりました。

そこでおぼろげながら気づいたのは、外に出て運動ができる日は少し体調を持ち直すという事です。

当時はなぜなのか仕組みが良くわかっていませんでしたが、実は、回復への重要な鍵がここに隠されていました。

しかし、外に出る気にならない日はどうすることもできず、ただ気分に身を任せ、悶々とするしかない日が続きました。

このころはかなりアップダウンが激しく、週単位で調子が揺れることもありました。

予備校

バーに重なる昔の姿

その日、私は、バーに行くことにしました。バーに行くといっても、昼間に空いているバーというのはありませんでしたので、夕方早い時間から空いているバーを探して、行きました。当然早い時間なので、ガラガラ。お客さんは全くいません。

そこで、お酒を注文したいところですが、服薬の関係であまり飲めませんので、私はバーにいってソフトドリンクとフードを注文するという、非効率的な事をしました(笑

久しぶりのバーで、店員さんにオーダーをするだけでかなり緊張してしまいましたが、コーラを手にしてポテトを食べているうちに、ふと、まだ元気なころにバーに行っていた記憶が戻ってきました。

それはまだ自分がスーツを着て、仕事帰りにバーに寄って帰れるような生活ができている頃の、はるか昔の記憶でした。

コーラを掲げてカウンターに腰かけている自分に、その頃の記憶が重なりました。その時に、自分がとても不自然にその空間に溶け込めずにいることに気づきながらも、その頃の落ち着きを想い出すことができたのです。

お酒の代わりにコーラを片手に店員さんと会話をすることができました。お花見をしたかというような話でした。お花見なんて全く自分の現状とはかけ離れた話でした。

私は自分に普通の人としてお花見の話を振ってもらえたことが嬉しく、また、病気でないように振舞えたことが嬉しく、それが一つの自信につながったのです。

自分はまだ完全に人間性を失っていない。

カフェに挑戦

図書館で全く勉強が進まない体調であるという事と、チャンネル不足を解消できないということに気づいた私は、今度はカフェに挑戦します。

カフェでは、少なくとも、注文するという会話が生まれる瞬間があるという事と、フードとドリンクがある事で、ただ勉強するよりも少し、気がまぎれるのではないかということもあり、図書館よりもハードルが低く、
チャンネル不足の解消にも有効ではないかと思いました。

そこで、近所の落ち着いたカフェをインターネットで調べ、そこへ昼から向かいました。

最初は注文するだけでかなり気を使いました。また、勉強はあまり進まず、コーヒーとケーキを食べてぼーっとして帰ることも多かったのですが、それでも何日か通ううちに、注文の際に軽い世間話を挟めるようになりました。

これは会話が全くなかった自分にとってとてもありがたい事でした。カフェに少しずつ慣れてくると、今度はもっと話をしたいという欲求にかられるようになりました。

そこで次に向かった先は、バーです。

バー

図書館は針のむしろ

まず私が目を付けたのは図書館でした。アパートから少し遠いですが、駅前を通って、少し離れたところには図書館があります。そこに通おうと思い、朝から起きる努力をするようになりました。

もちろん、最初は全く起きれませんでしたので、昼から準備をして図書館に向かうということになります。ここで良かったのはウォーキング/ランニングを3ヶ月程度繰り返していたので、歩くのがそんなに苦ではなくなりつつありました。

参考書を詰めていざ図書館の座席へ。図書館で参考書を広げたのは良いですが、ただそこに座るというだけでも、かなりのエネルギーを使ってしまい、全く勉強どころではありません。

図書館の、人がたくさんいる空間に、一人座るという事だけでとても気を使ってしまい、勉強して何かを憶えるなどということは全くできないということが分かりました。

人がいる空間に自分がいるという事だけで緊張感がいっぱいで、そこに背筋を伸ばして座るという事だけで疲れてしまっています。針の筵の上に座らされているような気分で、参考書を広げて眺めているのが精いっぱいでした。

一時間もしないうちに疲れてしまい、アパートへ帰るということになります。こんな状態でどうやって働けるような状態に戻れるか全く見えない日々でした。

カフェ